タイの会議はなぜ長い?話がまとまらない理由と効率的な進め方

タイで働いていると、会議の進め方に戸惑うことがあります。
「30分の予定だったのに、気づけば1時間を超えている」
「いろいろ話したけれど、結局何が決まったのかわからない」
こんな経験がある方もいるのではないでしょうか。
私自身、タイ人スタッフとの会議で、話がどんどん横に広がっていく場面を何度も経験してきました。その都度イライラしてしまったり、話を途中で遮って無理やり本筋へ戻そうと躍起になったりしますが、うまくいかないこともしばしば。
日本人的な感覚では、「まず今日の議題を決めよう」と考えます。
ところが、会議中に別の問題が出てくる。さらに、その話から別の話題へ移っていく。
最終的には最初の議題がどこかへ行ってしまうことも。
では、どうすればタイで会議を効率よく進められるのか。
私なりの経験も交えながら、タイの現場で効率的に会議を進めるコツを考えてみました。
タイの会議はなぜ長引きやすいのか
まず感じるのが、ひとつの議題から話が広がりやすいことです。
たとえば、採用状況について話していたとします。
「応募者が少ない」という話から、求人広告の具体的な話になる。そこからFacebookの運用方法へ移る。
さらに過去の採用実績の話になり、いつの間にか別部署の人員不足について話している。
どれも無関係ではありません。
だからこそ、話を止めるタイミングが難しいのです。
会議が「決める場所」とは限らない
日本企業では、会議の目的として「意思決定」が比較的強く意識されます。
議題があり、選択肢を検討する。そして最後に結論を出す。
一方、タイでは情報共有や関係者との調整も会議の役割になりがちです。
本題に入る前の会話も大切にされ、最初の会議では関係構築が中心になる場合もあるのだとか。
つまり、日本人側が「何も決まらなかった」と感じても、タイ人側には別の意味がある可能性があります。
・情報を共有できた。
・上司の考えを確認できた。
・関係者がどう考えているのかわかった。
これらも会議の成果というわけです。
ただし、社内の実務では毎回それでは困ります。
情報共有と意思決定が混ざると、会議はどうしても長くなります。
「今日は何のために集まっているのか」まずここを揃える必要があります。
話がまとまりにくい背景にはタイの職場文化もある
タイの会議を考えるうえで、上下関係は無視できません。
日本企業にも役職や上下関係はあります。
ただ、タイでは相手の年齢や立場を踏まえて、接し方を変える傾向がより強く見られます。
職場でも上司や年長者への配慮があり、部下が正面から異論を唱えにくい場合があります。
まあこれは日本の会議でも同じようなことが起こっている可能性が高いですよね。
「反対です」とはなかなか言わない
もうひとつ知っておきたいのが、間接的な意思表示です。
タイでは相手の面子や人間関係への配慮から、直接的な拒否を避ける傾向があります。
うなずいているから賛成。笑顔だから問題なし。
必ずしもそうとは限りません。
日本人上司が、「この方法でいいよね?」と聞けば、
「Yes」という答えが返ってくるかもしれません。
しかし、本当に賛成しているとは限らないわけです。
特に上司と部下が参加する会議では注意が必要でしょう。
「何か意見はありますか?」と聞いても、シーン。
私も何度も経験しています。
ここで「意見がないんだな」と判断すると、後から別の場所で違う意見が出てくることがあります。
だったら会議で言ってよ、と思うところですが、そこにはタイなりの人間関係への配慮があります。
日本人側がこの前提を知らないと、「会議では誰も意見を言わない」「決めたことを決めたとおりにやらない」という不満につながってしまいます。
会議を効率化するなら「進め方」を先に決める
文化の違いはありますが、会議を毎回長時間やる必要はありません。
私が大切だと思うのは、タイ人の会議スタイルを変えることではなく、会議そのものを設計することです。
まず、何をする会議なのかを明確にします。
「情報共有」
「アイデア出し」
「問題解決」
「意思決定」
同じ会議でも目的によって進め方は変わります。
特に意思決定が必要なら、
「今日の会議では○○を決めます」
と最初に伝えておいた方がいいでしょう。
話がずれたら一度預かる
会議中に別の問題が出てくること自体は悪くありません。
むしろ、現場の問題を発見するきっかけになる場合もあります。
問題は、その話をそのまま続けてしまうこと。
そこで使いやすいのが、いわゆる「置いておく」という手法です。
今の議題とは別に、後で確認する話題を一旦置いておきます。
「その問題も確認したいので、最後に話しましょう」
「大事な話なので、次の議題として残しておきます」
こんな形です。
発言そのものを否定せず、話題だけを元に戻します。
タイでは特に、このやり方が使いやすいと私は感じています。
「その話は今関係ないです」と切ってしまうと、「自分の考えを否定された」と感じてしまい、次から発言しなくなる可能性もあります。
発言は受け止める。でも、今の論点には戻す。
進行役に必要なのは、この交通整理です。
最後の5分で「誰が・何を・いつまでに」
もうひとつ欠かせないのが、会議終了時の確認です。
長い議事録を作るより、私はAction Itemを明確にする方が効果的だと思っています。
1.誰がやるのか。
2・何をやるのか。
3.いつまでにやるのか。
最低限、この3つを確認します。
たとえば、
「Somchaiさんが求人内容を修正。水曜日まで」
ここまで決めれば、次の行動がわかります。
逆に、「求人内容を改善することになりました」だけでは、誰も動かない可能性があります。
そしてこの決定は必ず会議終了5分前におさらいします。
「じゃあ各々いつまでに何をするんだっけ?」
会議の人数が数名程度であれば、Somchaiさんは?Nakharinさんは?と一人一人に自分のAction Itemを再確認させます。
これだけで「結局何が決まったの?」を減らせるだけでなく、双方の認識のズレの有無が確認でき、本人にも責任意識をセットすることができます。
人数が多い会議であれば、最後に進行役がおさらいで「ではAさんは水曜までに△を、BさんはAさんから△を受け取り次第、月末までに×を完了させるということで大丈夫ですか?」と確認するだけでも良いです。
この最後の5分があるかないかで、会議後のチームの動きはきっと変わるでしょう。
日本人が進行役になるときに意識したいこと
日本人がタイ人スタッフとの会議を進行する場合、つい自分で結論を出したくなります。
話がまとまらない。時間もなくなってくる。
「じゃあ、こうしましょう」
そう言えば早いのですが、「結局決めるのは日本人でしょ」という考えが根付いてしまう危険性があります。
この考えがチームメンバーに根付いてしまうと、会議中に意見が出にくくなり、有意義なものではなくなってしまうのです。
進行役の仕事は、自分が一番話すことではありません。
むしろ、出てきた意見を整理することです。
「Aさんは○○という意見ですね」
「Bさんは△△を心配しているということですね」
一度整理してあげるだけで、論点が見えやすくなります。
2026年に発表されたタイ企業の会議に関する研究でも、興味深い結果が出ています。
調査対象となった管理職は、従業員より発言量を抑え、短い相槌を使って発言を促していました。
管理職が話し続けるのではなく、スタッフが話せる状況を作っていたわけです。
タイ人スタッフから意見を引き出すうえで、参考になる考え方だと思いませんか?
「何か意見ありますか?」だけでは難しい
とはいえ、「何か意見はありますか?」だけで活発な議論になるとは限りません。
そこで、質問を具体的にします。
「A案とB案なら、どちらがいい?」
「この方法で問題になりそうなところはある?」
「実際にこの作業をする立場ならどう思う?」
この方が答えやすくなります。
それでも発言が出にくい場合は、会議前に個別で聞く方法もあります。
タイでは全員の前では言いにくくても、1対1なら話してくれるケースがあります。
事前に意見を聞いておけば、会議中に、「この点についてはどう思いますか?」と話を振ることもできます。
いわゆる根回しですが、タイでも結構使えます。
日本式の会議をそのまま持ち込む必要はありません。
「無駄な話をなくして30分で終わらせる」それだけが効率化ではないはず。
30分で必要な意見を集め、決めるべきことを決める。
こちらを目指した方が、タイの職場には合っていると私は思います。
まとめ|タイの会議は「時間」より「設計」を変える
タイで会議が長引くと、つい文化や国民性のせいにしたくなります。
しかし、実際にはそれほど単純ではありません。
上下関係への配慮がある。
直接的な反対意見を避ける。
人間関係や場の調和も大切にする。
こうした特徴が重なることで、日本人には話がまとまりにくく見えることがあります。
だからといって、すべてタイ式に合わせる必要もありません。
会議の目的を最初に決める。
論点がずれたら一度預かる。
意見を具体的な質問で引き出す。
最後にAction Itemを確認する。
このあたりは、明日からでも取り入れられます。
私がタイで働いていて感じるのは、「会議を仕切る」と「会議を整理する」は少し違うということです。
日本人が一方的に結論へ引っ張れば、確かに会議は早く終わります。
でも、それではタイ人スタッフが考えていることを拾えないかもしれません。
必要なのは、発言しやすい空気を残しながら、論点だけは迷子にさせないこと。
タイでの会議では、このバランスがちょうどいいのではないでしょうか。
参考資料・参考サイト
・Thai - Communication — Cultural Atlas
・Communication between Managers and Employees in the Context of Business Organizations
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タイワークラボ編集部

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