タイ人スタッフへの指示が伝わらない原因とは?今日から見直せる4つのポイント

「指示通りに動いてくれない」「わかったと言うのに、結果がまったく違う」
これは、タイでのマネジメントにおいて、日本人管理者が何度もする経験です。
タイ人スタッフへの指示がうまく通じないと感じたとき、多くのはまず「自分の伝え方が悪かったのか」と反省します。しかし実際には、伝え方だけが問題ではないケースがほとんどです。
指示が伝わらない背景には、言語や職場文化の違いが複雑に絡み合っています。
「もっと大きな声で言えばいいのか」「日本語ではなく英語で話すべきか」なんてことで悩んでいるとしたら、少し立ち止まって考えてみてください。
この記事では、タイの職場でよく起きるすれ違いのパターンを整理しながら、今日から見直せる4つのポイントをお伝えします。
この記事の目次
そもそも「伝わった」と思い込んでいないか
「クラップ」「カ」は"理解"ではなく"受信"のサイン
指示を出したあと、スタッフが「クラップ(ครับ・男性の丁寧な返事)」や「カ(ค่ะ・女性の丁寧な返事)」と答えてくれると、「よし、わかってくれた」と安心してしまいがちです。
ところが、この返事は「理解しました」ではなく「聞こえています」というサインに近いことがあります。
タイの職場文化には、上司や目上の人に対して「ノー」と言わない、異論を挟まないという強い習慣があります。
これはスタッフの誠実さの欠如ではなく、タイ社会における礼儀の一形態です。
相手の言葉を否定することは、相手の顔を傷つける行為とみなされるため、たとえ内容が理解できていなくても「わかりました」と答えてしまうのです。
私がタイの現場でよく見かけるのは、指示を出した側が「ちゃんと返事をもらった」と安心し、スタッフ側は「よくわからなかったけれど、とりあえず頷いた」という状態のまま、仕事が進んでしまうパターンです。
「言い直してもらう」確認を習慣にする
では、どうすればよいか。解決策はシンプルです。
指示を出したあとに「この作業、どんな手順でやろうと思っていますか?」と聞き返してみてください。
理解できていれば答えられますし、できていなければそこで気づくことができます。
「はい」「わかりました」だけで確認を終わらせないこと。それがすれ違いを防ぐ最初の一歩です。
指示の出し方は適切か│具体的かつ明確さが大事
「空気を読む」はタイでは通用しない
日本の職場では、「あとはよろしく」「いい感じにまとめておいて」といった言い回しが普通に使われます。
長く一緒に働いていれば、言わなくてもわかること、察してもらえることが増えていくためです。
しかしタイの職場では、この「空気を読む」前提はほぼ通用しません。
タイ人スタッフが「わからない」「決めかねている」と感じたとき、自己判断で動くよりも立ち止まって待つ選択をすることが多いです。
これは受け身な姿勢ではなく、「確認せずに勝手に進めてはいけない」という真面目さの表れである場合もあります。
指示に必ず含めるべき3つの要素
指示を出すときに、できる限り明確にしたい3点があります。
1.誰がやるのか
グループへの指示は「誰かがやってくれるだろう」という状態を生みやすいため、担当者を名指しで決めると動きが変わります。
2.期限はいつまでか
「なるべく早く」「できれば今週中に」といった表現は、受け取り方が人によって大きく変わります。
「水曜日の午前中まで」のように、日時で示すのが確実です。
3.どの状態になったら完成か
ゴールイメージを共有することは対タイ人への指示出しに留まらず、とても大切。
言葉だけで説明するよりも、過去の完成品や参考資料を見せる方がはるかに伝わりやすいです。
「これと同じ形式で作ってください」の一言で、長い説明が不要になることも少なくありません。
指示の粒度を細かくすることは、スタッフを「信用していない」ということではありません。
むしろ、相手が迷わず動けるための環境を整える、マネジメントの基本動作と考えてください。
指示のタイミングと場の設定は正しいか
タイ人が大切にする「クワーム・ペン・ナー」とは
タイ人スタッフと関わるうえで、日本人マネージャーが見落としやすいのが「どこで・どんな状況で指示を出すか」という点です。
これには、タイ社会での「クワーム・ペン・ナー(ความเป็นหน้า)」という概念が関係しています。
日本語に直訳すると「顔の状態」、つまり「面子」や「体裁」という意味です。
人前で恥をかかされること、否定されること、指摘されることは、この「クワーム・ペン・ナー」を傷つける行為とみなされます。
メンツが潰れるようなシチュエーションで改めて指示を出されても、スタッフには届きません。適切なタイミングと場の設定は鍵です。
大勢の前での指摘が信頼を壊す
朝礼や会議の場で「なぜできていないんですか」「この作業のやり方が間違っています」と指摘することは、日本では普通の光景かもしれません。
ただタイでは、その場にいた全員の前で恥をかかされたと感じるスタッフも多く、信頼関係に思わぬダメージを与えることがあります。
改善の指摘やミスの確認は、できる限り1対1の場で行うことをおすすめします。
メッセージアプリ(LINEなど)や書面での連絡に切り替えることで、スタッフが自分のペースで内容を受け取れるようになり、反応が変わるケースも多いです。
指示を出す内容だけでなく場の設計にも気を配ることで、スタッフとの関係はずいぶん変わります。
通訳・中間管理職を正しく活用できているか
「伝言ゲーム」が起きていないか確認する
タイ語が堪能でない日本人マネージャーの多くは、タイ語通訳やタイ人の中間管理職を介してスタッフとコミュニケーションを取っています。この仕組み自体は合理的ですが、うまく機能していないケースも少なくありません。
よくある問題のひとつが、「伝言ゲーム」の発生です。
日本人マネージャーが伝えた指示を、通訳や中間管理職が独自の解釈を加えながらスタッフに伝えてしまうと、元の指示とは異なる内容が末端まで届きます。
通訳する側に悪意はなくても、言語の変換過程で情報が変形するのは避けにくいことです。
また、タイ人のチームリーダーは、自分のチームメンバーとの関係を大切にしながら、日本人マネージャーの要求にも応えなければならないプレッシャーの中で動いています。
「伝えたはずだ」と思っていても、チームリーダーが「やわらかく」伝えたり、一部を省いたりしていることもあります。
指示の文書化とブリーフィングをセットにする
この問題を防ぐには、指示の内容をあらかじめ文書化しておくことが効果的。
口頭で伝えた内容をチャットや書面で補足し、「これをチームに共有してください」と渡しておくと、情報の変形が起きにくくなります。
さらに、中間管理職に対するブリーフィング(事前の目的・背景の共有)も欠かせません。
「何のためにこの指示を出しているのか」を理解してもらったうえで動いてもらうと、現場判断の精度が上がります。
指示の背景まで共有することが、チーム全体の動きを変える鍵です。
まとめ|「伝わらない」問題はスタッフではなく仕組みにある
タイ人スタッフへの指示がうまく伝わらないとき、「やる気がない」「真面目に仕事をしていない」とタイ人スタッフを評価したり、「もっと情熱をもって伝えるべきだ!」いう方向で解決しようとしても、根本的な改善にはつながりません。
文化や言語の違いを前提とした「仕組み」を整えることが、遠回りに見えて実は一番の近道です。
今回お伝えした4つの見直しポイントを、以下に改めてまとめました。
- 「クラップ」「カ」の返事を理解の証と思い込まず、内容を言い直してもらう確認を習慣にする
- 誰が・いつまでに・どの状態で、という指示の粒度を細かくする
- 大勢の前での指摘を避け、1対1や書面での指示に切り替える
- 通訳や中間管理職への依存度を見直し、指示を文書化・ブリーフィングで補強するそして5つ目は、これら4つを「スタッフの問題」ではなく「仕組みの問題」として捉え直すこと。
これら4つのポイントを押さえ、指示の出し方を仕組み化していくことで、ミスコミュニケーションは格段に減少するでしょう。
一朝一夕で変わるものではありませんが、ひとつずつ試してみることで、現場の空気は少しずつ変わっていきます。
タイの職場を「伝わらない場所」から「一緒に動ける場所」に変えていくのは、日々の小さな見直しの積み重ねです。
尚、記事内で話したタイの職場文化に関しては様々な記事でまとめています。
「タイで働く」ということをイメージしやすいと思うので、是非併せてチェックしてくださいね。
▶タイの働き方とは?日本とは違うタイの職場文化あるある10選
▶タイで管理職|チームマネジメントで押さえておきたい5つの「ない」
タイワークラボ編集部

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