タイの残業代(OT)ルール完全解説|割増率・計算方法・支払い義務を労働者保護法から解説

タイの残業代(OT)ルール完全解説|割増率・計算方法・支払い義務を労働者保護法から解説

タイで働く人は知っておきたい残業代(OT)のルール。

実は「日本人は支給対象外」など、誤った独自ルールを掲げる会社が多いもののひとつです。

しかし、タイの労働者保護法では労働じかにゃ残業代の支払いについて明確なルールが定められており、タイで働く外国人も原則その対象となります。

企業の人事担当者は正しいルールを理解して残業代を計算するべきなのですが、実際には「何時間から残業?」「管理職は対象外?」「会社が払わなくても問題ない?」など、誤解されているケースが非常に多く見られます。

本記事では、タイにおける残業代(OT)の基本ルールを、労働時間・割増率・支払義務の観点からわかりやすく解説します。

タイの労働時間と残業(OT)の基本ルール

まずは、タイの労働者保護法で定められている「法定労働時間」と「残業(OT)」の考え方について整理していきましょう。

日本と似ている部分もありますが、細かい定義や運用ルールは異なるため、正確に理解しておくことが重要です。

法定労働時間は1日・1週間でどう決まっている?

タイの労働者保護法では、原則として1日8時間、1週間48時間が法定労働時間とされています。

この時間を超える場合は残業(OT)扱いとなり、働かせるには労働者の同意が必要です。

なお、業種や仕事内容によっては、1日の上限が8時間未満に設定されているケースも。

たとえば、危険性や健康への影響が大きい業務では、1日の上限が7時間未満と定められています。

どこからが残業(OT)になるのか

原則として、法定労働時間を超えた時点からが残業(OT)です。

法定時間の基準は、1日当たりよりも1週間当たりの方が重視されます。そのため、定時が9時間の会社(※)など、労働時間が1日8時間を超えていても1週間で48時間を超えていなければ、残業代の支払いも発生しません。

この運用についてはタイの労働者保護法に明記されている内容ではなく、タイの現場で一般的とされている方法です。そのため、労組間の合意が必要なことが前提となります。

※タイ労働者保護法に記載されている1日当たりの法定労働時間は8時間未満ですが、労使間の合意がある場合は最長9時間まで通常勤務時間として定めることが可能。しかし、1日当たりの労働時間が9時間を超える場合は、どんな理由があっても残業扱いとなります。

休日出勤はOT扱いになる?

原則として休日出勤もOT扱いとなります。

休日出勤は通常勤務日とは異なり、割増賃金の支払いが必要です。

特に注意したいのは、「代休を与えればOTを払わなくてよい」という考え方です。

休日出勤の取り扱いについては、タイ労働者保護法には明記されていません。

つまり、代休を与えることで割増賃金を支払うことが免除されるわけでも、されないわけでもないのです。

仮に代休制度を設けている会社の従業員が、休日出勤分の割増賃金の支払いに関する訴訟を起こした場合、雇用主がそれを支払うべきか否かの判断は労働局の担当官や裁判官の判断に委ねられます。

残業代(OT)の割増率と計算方法

残業をした場合、会社は必ず残業代を支払わなければなりません。

ここでは、残業代(OT)の割増率や、計算方法について詳しく説明していきます。

残業代の割増率(平日OT・休日出勤・休日OT)

タイの労働者保護法では、残業代の割増率が以下の様に定められています。

  • 平日の時間外労働:1時間当たりの賃金の1.5倍以上
  • 休日出勤(日給者):1時間当たりの賃金の2.0倍以上
  • 休日出勤(月給者):1時間当たりの賃金の1.0倍以上
  • 休日出勤時の時間外労働:1時間当たりの賃金の3.0倍以上

ここで言う「賃金」は、基本給を指すのが一般的です。会社によっては基本給だけでなく諸手当が含まれる場合もありますが、割合としては少ないです。

参考:Thailand Law Library

残業代(OT)の計算方法【具体例で解説】

タイでは、残業代(OT)は原則「基本給」を基準に計算し、労働者保護法で定められた割増率を掛けて算出します。

算出は月給制・日給制を問わず、まずは時給換算を行うのが基本的な考え方です。

以下では、月給制を例に具体的な計算方法を見ていきます。


計算例①:平日の時間外労働(1.5倍)

前提条件

  • 月給:30,000バーツ
  • 1日の労働時間:8時間
  • 1ヶ月の平日残業時間:20時間 の場合

① 時給を算出

30,000÷30日÷8時間=125バーツ/時

② 残業代を計算(1.5倍)

124×1.5×30時間=3,750バーツ

この場合、1ヶ月の残業代(OT)は3,750バーツとなります。


計算例②:休日に勤務した場合(1倍)

同じ条件で、休日に8時間勤務した場合は、以下のように計算します。

125×1×8時間=1,000バーツ 

※日給者の場合は賃金の2倍なので「125×2×8時間=2,000バーツ」となります。

計算例③:休日出勤日の時間外労働(3倍)

休日出勤をした日に残業を2時間した場合は以下のように計算します。

125×3×2時間=750バーツ


計算時の注意点

  • 月給制・日給制問わず必ず時給換算して計算する
  • 割増率は最低ラインであり、会社がそれ以上支払うことは可能
  • 「固定残業代に含まれている」という説明でも、実態が伴わなければ違法になる可能性がある

残業代の計算方法は一見シンプルですが、実務では誤った計算が行われているケースも少なくありません。

自分の残業代が正しく支払われているかを確認するためにも、基本的な計算方法は押さえておくことが大切です。

残業代(OT)の支払い義務はある?【タイ労働法の考え方】

タイでは、残業代の支払いは法律上の義務とされています。

たとえ会社と従業員の合意があっても、法律を下回る条件は無効になります。

とは言え、実態は古くからある会社の就業規則や独自ルールに則って、正しく支払われていないというケースも無きにしも非ず。

最後の章では残業代の支払いが必要なケースと、対象外になるケースをご紹介します。

残業代(OT)の支払いが必要なケース

以下の場合、会社は残業代を支払う義務があります。

  • 法定労働時間(1日8時間、週48時間)を超えて働かせた場合
  • 休日に労働させた場合
  • 会社の指示・業務命令に基づく残業

ポイントは、「自主的に残った」ではなく「業務上必要だったか」。業務上必要と判断されれば、原則OT支払い対象になります。

残業代(OT)が支払われない・対象外になるケース

一方で、以下のようなケースでは残業代が支払われないこともあります

  • 管理職(Managerクラス)で、職務内容・権限・給与水準が管理職に該当する場合
  • 会社の明確な指示がなく、完全に私的判断で残業した場合
  • 労働時間に該当しない待機・休憩時間(※)を含んで8時間を超えている場合

ただし、「役職名がManagerだからOTなし」という扱いはNG。あくまで実際の業務内容が重視されます。

※待機・休憩時間が1日当たり2時間を超える場合は労働時間扱いとなり、通常賃金が発生します。

まとめ

タイの残業代(OT)は、日本と似ている部分もありますが、割増率や計算の考え方にはタイ独自のルールがあります。

タイで働き、人事労務に携わる業務を行う人は特に、支払いが必要なケースや、割増率などは頭に入れておきましょう。

また、残業代の支払いが正しく行われていないことが発覚した場合、企業には罰則や罰金刑が課せられることがあります。自社の運用に問題はないか、改めて確認しておくと安心です。

参考:Ministry of Labor warns employers who deduct overtime wage as illegal

その他に押さえておきたい基本的な労働法は社会保険制度や休暇制度などがあります。

わかりやすくまとめているので、これを機に併せてご覧ください。

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