タイ就職のメリット・デメリット|経験者が語る現地就職のリアル

タイ就職のメリット・デメリット|経験者が語る現地就職のリアル

タイ就職って実際どうなの?物価が安い・海外生活が楽しそう…そんなポジティブな印象がある一方で、給与水準やキャリア面が気になる人も多いはず。

本記事では、実際にタイで働く日本人の声をもとに、リアルなメリットとデメリットについてご紹介します。

タイ就職を前向きに検討するための参考に!

タイ就職とは?雇用形態や職種の基本

前置きとして、タイ就職における雇用形態や職種について軽く解説します。

タイで働く日本人は、大きく以下の4カテゴリに分類されます。

  • 駐在員
  • 現地採用
  • 起業家
  • ノマドワーカー

その中で「雇用主がいる」というカテゴリに入るのは駐在員と現地採用です。

つまり「タイ就職」という言葉に当てはまるのは駐在員と現地採用となります。

また、タイでは外国人が従事できる業務には制限があるため、日本人はタイ人と同じように誰でも好きな職種に就ける訳ではありません。

これはタイ人の雇用やタイの文化を守るためのもので、39の職種*が指定されています。

簡単に言うと、タイ人が出来る仕事を外国人が奪ってはいけないというような内容です。具体的には製造業の一般労働者やマッサージの施術者、観光ガイドなどが当てはまります。

*参考リンク:JETRO(日本貿易振興機構)「タイ 外国人就業規制・在留許可、現地人の雇用」

駐在員と現地採用の違い

タイ就職に当てはまるのは駐在員と現地採用という2つのカテゴリだと話しましたが、ではこの2つのカテゴリは何が違うの?という話になってきますよね。

まず、駐在員とは、日本の会社の社員で、海外の子会社や支店へ出向している人のことです。

日本である程度の経験がある方が選ばれる傾向にあるため、海外の現地法人責任者を始めとする管理職として責任のある立場を任される方が多いです。

次に現地採用とは、海外の現地企業に直接雇用されている人のことです。

一般スタッフとして働く若手人材から、長くタイで現法を守る代表取締役まで、その役割は多岐にわたります。

タイの日本人向け求人の多くは現地採用として働く人材の雇用を目指すものですが、駐在員としての採用を視野に入れている求人も少なからずあります。
また、現地採用として長く働く中で、駐在員へ昇格するケースも少なくありません。

タイで働く日本人の主な職種

タイで働く日本人の多くは日本語能力やマネジメント能力を活かせる職種もしくはエンジニアなどの技術職となります。

海外就職サイト「カモメアジア」を見てみると、求人数上位は以下3つのカテゴリでした。

  1. 営業・企画・マーケティング
  2. 技術系専門職(製造業エンジニア・開発・研究)
  3. IT・通信・Webサービス
    ※2025年8月現在の情報

上位3つの中でも特に「営業・企画・マーケティング」のカテゴリの求人数が圧倒的に多いです。

日系企業が多く進出しているタイでは、多くの企業の部門長を日本人が任されています。

そのため、日系企業を相手にビジネスを行う企業にとって日本人営業担当者は必要不可欠な存在なのです。

昨今のトレンドはノマドワーカー?

「タイ就職」と言えるかどうかは微妙ですが、昨今、新しい働き方としてノマドワーカーが注目されています。

これは、DTV( Destination Thailand Visa)ビザが2024年7月に新設されたことがきっかけです。

このビザでは、フルリモートで働く人やフリーランサーを始めとする、いわゆるノマドワーカーがタイに滞在しながら仕事をすることが許可されます。
最長180日間タイに滞在する事ができ、尚且つ有効期限が5年間という好条件。
要件や取得費用も近隣諸国と比較するとハードルが低いため注目を集めています。

このビザの新設により、デジタルノマドやフルリモートで働く若い世代でも、ある程度稼いでいたり貯蓄があれば、タイで働きながら暮らすということに挑戦しやすくなりました。

タイ就職で得られる5つのメリット

では本題に入りましょう。

まずは、タイ就職で得られる5つのメリットを挙げてみました。

海外生活をしながら働ける

タイ就職の1番のメリットは「海外生活をしながら働ける」という点ではないでしょうか。

海外生活と言えばワーキングホリデーや語学留学というイメージが沸きます。しかし、いずれも数年程度の期間限定になってしまったり、年齢制限があったりします。

しかしタイ就職なら、仕事さえあれば期間や年齢に縛られずに海外生活を送ることが出来ます。

海外での異文化の刺激に触れるのは短期旅行でも出来ますが、現地でのリアルな生活を体感することはできません。
また、長期の旅行がしたいと思ったら、退職や休職をする必要があるため、安定した収入がなくなります。

しかし現地で仕事を見つけて生活をすれば、リアルな生活を体感しながら収入まで得ることができて一石二鳥です。

生活コストが比較的低く、暮らしやすい

バンコクは物価の高騰が顕著なことに加え、先の見えない円安の状況が続いています。
そのため、物価の安さを感じられる機会が減ってきたという声が多くあり、これは事実です。

しかし、家賃や水道光熱費など、あらゆる部分ではまだまだ物価の安さを実感できます。
私の場合は日本で暮らしていた頃よりもまだまだ生活コストが低いです。

日本よりも生活コストを抑えられる国は他にもたくさんありますが、バンコクのように日本人が暮らしやすく利便性の高い国は少ないでしょう。

日本人としての市場価値を発揮できる職場が多い

6,000社以上の日系企業があるタイには日本人向けの仕事がたくさんあります。

例えば高い日本語能力が求められるポジションです。

日本語がよくできる優秀なタイ人もたくさんいますが、日本人ならではの常識や慣習、感覚的な部分はやはり言葉が堪能でも容易に会得できるものではありません。
そのため、高い日本語能力を求められるポジションや、日本人の対応をするポジションでは日本人としてのアイデンティティが十分に発揮できるでしょう。

製造業の場合は、技術者や工場管理部門などで日本人が責任者を務めていることが多いです。
これは、日本が長い期間を経て造り上げた技術やノウハウをタイの現地法人へ継承する事がミッションとなってるため。

技術的な分野に長けている人は希少価値が高いため、日本の製造業での技術的な経験を持っている方はシニア世代でも好待遇で採用されることがあります。

通勤ストレスや長時間労働からの解放

通勤ストレスからの解放

これはタイ就職の最大のメリットかもしれません。

タイで電車通勤をしている人の多くはバンコクの都市部で働く人に限られ、地方の工業団地で働く人は基本的に車通勤となります。

バンコク勤務の方は電車を利用する方が多いですが東京のようにすし詰め状態の満員電車はごく稀です。
また、スクンビットに住む人であれば、電車での通勤時間が1時間もかからない人がほとんどでしょう。

地方へ車で通勤する人の場合は1時間以上かかるのが一般的。しかし、駐在員の場合は基本的に運転手付きのため、車の中で有意義な時間を過ごすことが出来ます。
※現地採用の場合も会社によっては運転手付きの社用車が支給されるケースあり

長時間労働からの解放

残業時間も日本と比較すると短くなる会社が多いでしょう。

タイ人は仕事よりもプライベートの時間に重きを置く人が多いため、基本的に定時で退社します。
社内で定時退社の空気が出来上がっているため、残業が当たり前の感覚になっている日本人たちも、残業せずに帰るためのタスク管理をするようになっていくのです。

残業が少ないもう一つの理由はバンコクの渋滞。

朝晩の通勤時間帯の渋滞は1日のうちで最も酷く、通常1時間の道のりが2時間、雨が降ったら3時間ということも日常茶飯事です。
そのため、郊外からバンコクへ戻って来る人は何が何でも定時で帰らないと渋滞に巻き込まれてしまいます。(定時で出ても渋滞にはまります)

社長や管理職レベルの方々も定時を過ぎたらさっさと帰るため、部下たちも帰りやすく、自然と残業時間が減るのです。

もちろん会社によって例外もありますよ。
特に駐在員の方は、長時間残業や帰宅後に仕事の続きをしたりなど、たくさんの苦労をされているケースもよく耳にします。

あくまで「多くの会社が残業をあまりしない文化や考え方である」という話です。

新しい人脈・経験が得られる

タイでは日本全国のあらゆる地域出身の、多様な経歴を持つ日本人が働いています。
しかし、1社あたりの日本人の数が限られているため、日本人同士に限定すると社内で気の合う友人・知人を見つけられる人は少ないでしょう。

そのため、多くの日本人は社外の人脈形成に力を入れる傾向があり、そういう人々の出会いの場である異業種交流会やゴルフコンペなどが盛んにおこなわれています。
日本で働いていたらまず出会う事が無かったであろう業種・役職の人たちとの関係性を構築できるのは、タイ就職の魅力のひとつです。

仕事の面においては、多くの日本人がマネージャーとして働く環境に身を置くため、日本で任されていた業務範囲を超えた新しい業務の経験を得ることが出来ます。

例えば、管理職や会計、人事労務などです。

日本にいた時は法務や労務が手助けをしてくれていた分野の事を聞く相手も、頼る相手も限られている環境下では自分で調べて情報を収集していくというスキルや習慣も身に付くことが期待できます。
この経験は将来的にどこで働くにしても活かせるものとなるでしょう。

事前に知っておきたい!タイ就職の5つのデメリット

タイ就職を検討する際にはメリットだけでなくデメリットも知っておく必要があります。

デメリットを事前に知る事で、自身が本当にタイ就職に向いているかどうかの判断材料にもなりますし、就職後のギャップを減らすことにも繋がります。

給与は日本と比べて低め

現地採用としてタイ就職を果たす場合は、日本と比較して給与が低くなる可能性があります。

タイで日本人が働く場合の最低賃金は5万バーツ(約22万5,000円(※1))。※一部の職種や業種を除く
これは日本の平均的な新卒初任給と同等レベル(※2)となっており、税金で引かれる額が少なく物価も安いタイの方が手取り額や自由に使えるお金が多いです。

しかし現地採用の場合はキャリアアップを重ねても給与はさほど上がらない傾向があるため、中間管理職クラスでおよそ8万バーツ~10万バーツ(36万円~45万円)が一般的です。

新卒や第二新卒くらいの年齢の若い世代にとってはタイの方が手元に残るお金が多く魅力的に感じられますが、そこそこキャリアを積んだ方がタイ就職に挑む場合は、日本よりも収入が減る可能性があることも理解しておく必要があります。

※1)1バーツ=4.5円で計算
※2)参考1:産労総合研究所「2025年度 決定初任給調査」 参考2:労務行政研究所「2025年度決定初任給の水準」

日本でのキャリアが活かせない場合もある

タイ就職では、日本でのキャリアが必ずしも活かせるわけではありません。

これは「ご縁」の部分ももちろんあるのですが、そもそもタイでは日本人を含む外国人が従事できる職種は限られているためです。

美容関係を例に挙げてみましょう。

美容師やエステティシャンなど、実際にお客様相手に施術をおこなう様な職種は、店舗マネジメントや人材の育成などを目的とするポジションでしか働くことができません。また、そのようなポジションは日本人オーナーが1人で担当するパターンがおおいため、日本人向けの求人が出ることはごく稀です。

オフィス勤務関連で例に挙げてみると、人事総務や経理などでしょうか。

バックオフィス系の職種は社内外のタイ人とのやりとりが多い職種となるため、経験豊富なタイ人を採用するケースが多いです。
法律や会計制度も日本と異なるため、日本で培った経験や貯えてきた知識を活かしにくい職種とも言えるでしょう。
また、バックオフィス系の管理部門は会社経営の中核を担うため、駐在員が配属されることが多いです。そのため、なかなか求人が出て来ない職種です。

このように、たとえ日本で積み上げた経験や知識が豊富にあっても、タイ就職市場では求められていないケースがあります。

異業種や未経験の職種にチャレンジせざるを得ない可能性がある事は念頭に置いておきましょう。

ビザ・保険・税制などの制度理解が必要

タイで外国人が働く為には就労ビザと労働許可証(ワークパーミット)が必要。これはタイ就職を考えるうえでしっかりと理解しておくべきことです。

また、社会保険や税制も日本と異なるので、こちらもしっかり理解しておかなければなりません。

ビザも保険も税金も、基本的には雇用主が責任をもって管理してくれるものなのですが、中には就労ビザを出さずに観光ビザで働かせるような行為をおこなう会社や、国に納めるべき費用を納めない会社など、違法性の高い行為を平気で行うような悪い会社もあります。

外国で暮らし、働くというのは日本人が日本で働くよりもハードルが高く制約も多いということをしっかり理解し、事前に基本的な制度くらいは把握しておくことがおすすめです。

医療・教育など家族帯同時の不安

タイで働くためのビザは家族を帯同させることが出来るため、旦那さんや奥さんのタイ就職を機に子供を含む家族全員でタイへ移住するというのも難しくはありません。

しかししっかりと検討しておきたいのは医療水準や教育水準が日本と比較して低く、高いレベルの医療や教育を受ける為には高額な費用が必要という点です。

タイは母子留学先の候補地としてもよく名前の挙がる国ではありますが、外国人が多く通うインターナショナルスクールや日本人学校は学費が高額。
安い学費で通える公立校の授業はタイ語のみですし、教育レベルもあまり高くないです。

数年間タイで生活して日本へ戻る事を視野に入れているようであれば、日本帰国後の事も考えた学校選びをする必要があり、そうなるとやはり選択肢は日本人学校やインターナショナルスクールになってくるでしょう。

子連れで移住する場合は家族が病気や怪我をした際の事も考えなければいけません。
タイには日本語が通じて高水準な医療サービスを提供する病院がいくつもありますが、受診料も高額です。

家族で移住する場合は非常時に活用できる海外旅行保険や現地の医療保険に加入する事を強くおすすめします。

現地文化とのギャップ

タイ就職後に多くの人が味わうのが現地文化と自分の常識のギャップです。

「過去に1度旅行に来てみて楽しかったのでタイ就職に挑戦する事にした」という方の中には、就職後に想像していた生活と現実とのギャップによって心が折れてしまうという方が少なくありません。

自分の中の当たり前が通用しない場面もたくさん目の当たりにし、驚いたり怒ったり、憤りを感じる場面もあるでしょう。

そんな時に「もう嫌だ・帰りたい」と後悔しないよう、タイ就職やタイ移住を検討する際には、可能であれば観光ではないタイ滞在を体験してみてください。

住むような滞在を体験してみることで、観光できた時には見えなかった景色が見えるはずですし、就職後のギャップを減らすことが出来るはずです。

まとめ

この記事ではタイ就職のメリットとデメリットについてご紹介しました。

タイ就職には大きな魅力もありますが、現実的なデメリットや課題もあります。

自分のライフスタイルやキャリアプランに照らし合わせて考えることが成功の為に大切になってくることです。

「迷っている段階」でこそ、情報収集が鍵!

せっかく日本を離れるという大きな決断を下そうとしているのですから、沢山悩んでしっかり情報収集をして、満足のいくタイ生活の第一歩を踏み出してくださいね!

タイワークラボ編集部

在タイ日系人材会社で働く日本人が、「タイで働く」「タイで暮らす」日本人のためのリアルな情報を、現地からお届けしています。
人材業界での実務経験や在住者の視点を活かし、キャリア・制度・くらしなど幅広いカテゴリをカバー。今タイで働いている人だけでなく、将来的にタイでの就職・移住などを考えている方にとってもヒントになるような記事を目指して、日々コンテンツを発信中です。

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