タイの働き方とは?日本とは違うタイの職場文化あるある10選

タイで働く多くの日本人が直面する最初の壁、それは「タイと日本では働く上での常識・文化が異なる」ということ。
郷に入っては郷に従えという言葉がありますが、やはりタイで働き初めて間もない頃はその違いに驚いたりイライラしてしまったりすること連続ではないでしょうか。
この記事ではタイで働く上で知っておきたい、日本とタイでは大きく異なる働き方や職場文化の違いをご紹介します。
タイでの「当たり前」を知る事でタイスタッフとの付き合い方やマネジメントにも役立つかもしれません。
この記事の目次
日本とは違う?タイでの働き方・職場文化あるある10選
タイと日本の働き方で異なる部分は多くありますが、もちろん個人や会社文化によっても異なる部分はあります。
特に日系企業の場合だと、日本の職場文化に近い環境で働いているタイ人も多いと聞きますので、これが全ての職場に当てはまる訳ではありません。
その辺りを念頭においてご覧いただければありがたいです。
前置きが長くなりましたが、今回は下記の10項目について解説していきたいと思います。
定時退社する人が多い
タイではワークライフバランスを重視する働き方を良しとするが多く、仕事よりも家族やプライベートを重視する傾向があります。
どうしても残業をしなければならない場合でも1時間~2時間程度に留まる事が多く、月の残業時間は10時間未満というのが一般的です。
もちろん業種や職種によっては毎日残業がある場合もありますし、製造業の作業現場で働く工員に関しては毎日数時間の残業がデフォルトになっている場合もあります。
ですので、どちらかというとバンコクのオフィスで働く人や、製造業勤務でもバックオフィスの一般社員などがこの傾向に当てはまりやすいと言えるでしょう。
タイで働く日本人に関してもこの傾向に当てはまる方が多く、これまで残業しがちだった方でも日本と比較すると残業時間が減ったという意見をよく耳にします。
ながら仕事をする人が多い
日本の会社では、オフィスで業務中に私語が聞こえてくる事は少ないでしょう。
しかしタイのオフィスは大変賑やか。
それはタイの職場文化のひとつである○○しながら働く人が非常に多いからです。
○○に入りがちなワードとしては「お喋り」「食事」「SNS」などでしょうか。
日本でも業務時間中にチョコなどのお菓子をつまんだりすることはあるでしょうが、タイは業務時間中に普通にサンドイッチやおにぎりのような食事を普通にし始めます。
日本の静かで張り詰めた空気のオフィスに慣れている人は、タイの人々の働き方に最初は大変驚く事でしょう。
女性管理職の割合が大きい
タイのオフィスに入ってスタッフの方々に目をやると、パソコンに向かって働く人の多くが女性である事に驚くかもしれません。
タイでは、女性社員の割合が大きく、中でも人事総務や経理などを始めとするバックオフィス系の職種にこの傾向が顕著に表れています。
帝国データバンクが2024年に実施した調査(※1)によると、日本の女性管理職の割合は平均10.9%であるのに対し、タイの女性管理職の割合は平均36.88%(※2)
上級管理職に至っては40%を超えるというデータもあり、タイでは多くの女性が男性と対等に仕事をしています。その文化根付いているため、日本人女性も重要な役割を任せて貰えたり、管理職へ昇進する機会が能力に応じて与えられやすい環境です。
※1)帝国データバンク 女性登用に対する企業の意識調査(2024年)
※2)Global Gender Gap 2024,341ページ
日本よりも年功序列の意識が強い
タイは日本よりも年上を敬う文化が強く、それは会社の中でも顕著に表れます。
ベンチャー企業を始めとする若い会社は実力主義で年齢が低くても能力や実力があればキャリアアップしていけるかもしれませんが、多くの企業にはまだ年功序列が制度として残っています。
タイにある日系企業の多くもこの文化にならっており、新規人材の採用や昇進などにおいて、年齢や学歴が重視される傾向が強いです。
仮に年功序列の文化を壊し、年齢の低い優秀な人材をチームリーダーや管理職に任命しても、年上の部下に遠慮してしまい本来の力を発揮することが出来なくなって辞めてしまうという話も珍しくありません。
従業員の昇進・昇格を検討する際は、年功序列制度にも配慮して適切な人員配置を行うことをおすすめします。
イベントごとに本気
クリスマスにソンクラン(タイ旧正月)、チャイニーズニューイヤーなど、1年間の主要なイベント時は常に本気で楽しむ人が多いです。
プライベートの時間はもちろんなのですが、このイベント好きの精神は職場でも発揮されます。
4月のソンクラン休暇前は花柄シャツで出勤をしますし、2月の中国正月の日は中華系の人以外も赤い服を着ています。
クリスマスが近づくとどこに保管していたのかわからないツリーが出てきて、いつの間にかキラキラに装飾されており、当日はクリスマスっぽい衣装を身に纏って仕事をしている人の姿も多く見られます。
ニューイヤーパーティーや社員旅行など、会社の大きなイベントではお揃いの服をわざわざ作るケースもあり。
とにかく1年間のイベントというイベントに全て乗っかり、どれも全力で楽しむのがタイスタイルです。
自分の責任の範囲外の事には手を出さない
タイでの就職は「企業を選ぶ」のではなく「仕事を選ぶ」という感覚の方が適切。
入社時には職務記述書の内容が明確にあり、自身の責任の範囲や期待値も明確になっています。
採用時のこのような背景により、それぞれの職種を専門的に極めていく人が多いです。
入社後の部署異動(経理から総務へ、事務から営業へ など)も極めて少なく、あらゆる部署の業務を掛け持ちでこなすような働き方も、無いのが一般的。
職務記述書において自身の責任の範囲もわかっているため、自身の責任の範囲を超える業務はお互いに手を出さないのが普通です。
日本の感覚で「手が空いているなら少しこちらの業務を手伝って」というような働かせ方を頻繁にしていると、会社への不信感や不満が溜まっていき、転職の引き金になってしまう恐れも無きにしも非ず。
失敗に対して寛容
「マイペンライ(大丈夫)」という言葉が、タイではよく使われます。
これは、タイ人の性格を表す代名詞と言われる事もしばしばある言葉です。
タイではこの「マイペンライ精神」が、働き方にも強く根付いています。
プロジェクトの計画を立てる時を想定して、比較してみましょう。
業務の細かい部分や想定される結果・リスクまで洗い出した上で緻密な計画を立て、スケジュール通りに遂行するのが日本だとすると、タイは大まかな計画を立て、問題は起こった時に対処法を考える。スケジュール通りに進まなくてもリスケしながら柔軟に対応していくというやり方です。
失敗しても修正すればマイペンライ、納期に遅れたら謝ってリスケすればマイペンライです。
このような考え方のため、細かな進捗報告や小さな問題ごとは聞かなければ上がってこないのが日常茶飯事。
失敗が許されない日本の仕事文化よりはプレッシャーが少ない環境かもしれませんが、日系企業の日本人同士で仕事をしている場合は、このマイペンライ精神は通用しないこともよくあるので、臨機応変に対応する必要があるでしょう。
※やる気なく適当な働き方をしているという訳ではありません。
月曜と金曜は出勤率が下がる
タイはシックリーブ(傷病休暇)が年間30日付与されることが労働者保護法で定められています。そのため、多くの会社員が割と気軽に体調不良で休暇を取ります。
月に2日使っても余るほどの日数があるため、大きな怪我や病気以外で30日の傷病休暇全てを使い切るケースはごく稀とは聞きますが、腹痛・下痢・頭痛などの軽い症状でも休みを取る人は大変多い印象です。
法令上、病院の診断書が必要なのは3日以上連続してシックリーブを使用する場合となるため、1日だけ休む場合は病院へ行く必要もありません。そのため、下痢や頭痛など軽い症状を理由に月曜・金曜にシックリーブを取得する人が多いです。
日本ではこんな働き方は絶対にできないでしょうが、タイは法令で認められた労働者の権利なので仕方がありません。
とは言え、雇用主側も様々な対策を打っており、シックリーブが多い場合は人事考課でマイナス評価になり、昇給賞与に影響するような仕組みづくりをしています。
つまり、法令では認められている物の、シックリーブを30日全て使い切るというような働き方は、タイ社会(特に経営・管理者層)でもあまり受け入れられていないのが実情です。
オフィスがとにかく寒い
年間平均気温が29℃と一年を通して温暖な気候のタイですが、バンコクのオフィスビルで働く人々はカーディガンやジャケットなどで厚着をしている人の姿が目立ちます。
なぜなら、オフィスがとにかく寒いから!
年中暑いタイでは、冷やすことがサービスという考え方が古くからあるようで、オフィスビルだけでなく商業施設や公共交通機関もとにかくキンキンに冷えています。
お買い物などで動き回る場合はキンキンに冷えた店内がありがたいと思う時もありますが、座って業務をおこなうオフィスの中ではなかなかの修行です。
タイのオフィス勤務が決まったら、冷え対策グッズも準備しておくのがおすすめです。
アイスブレイクが少ない
最後は商談などでよく見られる傾向です。
日本の場合、客先へ訪問したりオンラインで打ち合わせをする際に、相手との他愛ない話(アイスブレイク)をしてから本題に入ることが良くあります。
これは雑談で少し心の距離を縮めてから本題に入った方が、商談や打ち合わせが上手くいくと言われているためです。
しかしタイではあまりこのアイスブレイクの文化は根付いていないように思います。
特に担当者ベースの打ち合わせの場合だと、会うなりいきなり本題に入りサクサクと打ち合わせが進んでいきます。
要件を伝え、互いの意見を交換し、着地点を見つける。非常にシンプルで効率的かと思いきや、議論が脱線して論点がズレた状態で延々と議論を続けているという非効率な一面も。
スムーズにいく内容の場合は、アイスブレイクが無い分日本人同士の打ち合わせよりも短い時間で結論にたどり着く場合がよくあります。(討論モードに入ると、誰かが仲介しないと終わりが無いということもしばしば…一長一短ですね。笑)
まとめ
この記事では「タイでの働き方や職場文化のあるある」についてご紹介しました。
タイに赴任して間もない方や、初めてタイで働く方は、日本との働き方の違いに驚くことも多いかもしれません。
日系企業の場合は、日本での働き方のスタンダードに合わせて会社のルールを創り上げていくのも良いかもしれませんが、そもそも「働く」ということに関して今回ご紹介したようなことが普通であるという感覚を持っている人たちであるということは念頭に置いておく必要があります。
これらの職場文化や習慣を理解した上で、「日本らしい働き方」と「タイらしい働き方」両方の良い面を取り入れた、ハイブリッドな職場環境を築いて行けるのが理想ですね!
タイワークラボ編集部

在タイ日系人材会社で働く日本人が、「タイで働く」「タイで暮らす」日本人のためのリアルな情報を、現地からお届けしています。
人材業界での実務経験や在住者の視点を活かし、キャリア・制度・くらしなど幅広いカテゴリをカバー。今タイで働いている人だけでなく、将来的にタイでの就職・移住などを考えている方にとってもヒントになるような記事を目指して、日々コンテンツを発信中です。

