タイで働く日本人のキャリアの壁|30代・40代からの行き詰まりと乗り越え方

タイでの仕事にも慣れ、生活も安定してきた。職場では一定の責任を任され、給与にも大きな不満はない。

それでも、ふとした瞬間に「このまま同じ働き方を続けていて良いのだろうか」と考えることはありませんか。

特に30代・40代になると、昇進や給与だけでなく、将来の転職や日本への帰国も気になり始めるものです。

私は人材業界で働くなかで、タイで積み重ねた経験を次のキャリアにどう活かすか悩む日本人の方と接する機会があります。

今回は、タイで働く日本人が直面しやすいキャリアの壁と、将来の選択肢を広げるために考えておきたいことを取り上げます。

タイで働く日本人がキャリアの行き詰まりを感じる理由

日本人というだけでは評価されなくなる

タイの日系企業では、日本人顧客への対応や日本本社との調整など、日本人社員だからこそ任される仕事があります。

しかし、日本語が話せること自体が、必ずしも大きな強みになるとは限りません。

日本語を習得したタイ人スタッフもいますし、日本企業との取引に慣れた現地人材もいます。

企業が現地化を進めるなかで、日本人でなければ担当できない仕事は、以前より限定されていく可能性があります。

もちろん、日本人ならではの商習慣への理解や、日本本社との円滑なコミュニケーションには価値があるでしょう。

ただ、それだけを武器に長く働き続けるのは難しいかもしれません。

日本人だから採用される段階から、何ができる日本人なのかを問われる段階へ。

キャリアを重ねるほど、この違いが大きくなってきます。

昇進ポストが少なく、給与も頭打ちになりやすい

タイの日系企業では、日本人社員が数名しかいない職場も珍しくありません。

特に中小規模の現地法人では、マネージャーの上に現地法人社長しかいないという組織もあります。そうなると、どれだけ経験を積んでも、社内で昇進できるポストには限りがあるわけです。

また、現地採用の場合は駐在員とは異なる給与体系が適用されることが一般的。勤続年数が長くなっても、大幅な昇給を期待できないケースがあります。

一方、駐在員にも別の悩みがあるでしょう。

タイで大きな裁量を持って仕事をしていても、帰任後に同じ役職や権限が保証されるわけではありません。

現地採用と駐在員では事情が異なるものの、現在の仕事で成果を出すことと、次のキャリアに進めることは必ずしも一致しないのです。

タイでの経験が次のキャリアにつながらないケースとは?

何でも屋になってしまう日本人社員

タイの日系企業で働いていると、本来の担当業務以外にもさまざまな仕事を任されることがあります。

営業担当として入社したはずなのに、いつの間にか人事や総務、日本本社への報告、顧客とのトラブル対応まで担当している。そんな方もいるのではないでしょうか。

少人数の組織では、一人が複数の役割を担うこと自体は自然なことです。幅広い業務を経験できるというメリットもあります。

ただし、転職活動では少し事情が変わります。

例えば、営業マネージャーの求人に応募した場合、採用企業が知りたいのは売上実績や営業戦略、部下のマネジメント経験などです。

さまざまな仕事を担当してきたという説明だけでは、営業職としての専門性が十分に伝わらない可能性があります。

何でもできることと、特定の分野で高く評価されることは別の話。

幅広い経験を積むことは決して悪くありませんが、そのなかで自分の強みが何なのか、整理しておく必要があります。

タイでの役職や経験が日本で評価されるとは限らない

タイでマネージャーやゼネラルマネージャーとして働いていても、日本への転職で同等の役職に就けるとは限りません。

というのも、企業によって役職の定義や責任範囲が大きく異なるためです。

日本の採用企業からは、何名の部下を管理していたのか、どの程度の予算責任があったのか、どんな成果を上げたのかといった具体的な経験を確認されるでしょう。

海外勤務が10年あるという事実だけでは、評価の判断材料として十分ではありません。

逆に、役職がそれほど高くなくても、現地法人の立ち上げや業務改善、タイ人スタッフの育成など、明確な実績があれば強みになることもあります。

大切なのは、タイで何年働いたかではなく、その期間に何を経験し、どんな成果を残したかという点です。

キャリアの停滞を乗り越えるために、今できること

自分の市場価値を客観的に把握する

今の会社で長く働いていると、自分の給与や待遇が転職市場でどの程度の水準なのかがわからなくなることがあります。

特にタイでは、日本人向けの求人が特定の業種や職種に集中しているため、自分の経験を活かせる転職先がどのくらいあるのか、把握しておきたいところです。

そこでおすすめしたいのが、定期的に求人情報を確認すること。

例えば、自分と同じ職種の求人ではどの程度の給与が提示されているのか、どんな経験や語学力が求められているのかを調べてみます。

転職エージェントに相談してみるのも一つの方法です。

すぐに転職するつもりがなくても、今の経験で応募できる求人があるのか、客観的な意見を聞くことはできます。

ただし、提示されている給与が高いからといって、必ずしも自分がその条件で採用されるとは限りません。

求人票の条件と実際の採用評価は別物。その違いも含めて、自分の立ち位置を知ることが目的です。

タイで利用できる転職エージェントについては、タイ就職におすすめの転職エージェント5選でも紹介しています。

語学力だけでなく、専門性とマネジメント力を磨く

タイで働く日本人にとって、英語やタイ語は大きな武器になります。

しかし、語学力が高いだけで給与や役職が上がるとは限りません。

例えば製造業であれば、生産管理や品質管理の知識に加え、タイ人スタッフを指導できる能力。

営業職であれば、顧客との関係構築だけでなく、売上管理や新規市場の開拓経験などが評価につながるでしょう。

私が特に意識したいと思うのは、現地スタッフを通じて成果を出せる人材になることです。

自分一人で仕事をこなすのではなく、部下を育て、業務を仕組み化し、組織全体の生産性を高める。

こうした経験は、タイ国内での転職はもちろん、日本やほかの海外拠点で働く際にもアピールしやすい強みになります。

今の会社でキャリアを広げる方法もある

キャリアアップというと転職を思い浮かべがちですが、今の会社で新しい経験を積む方法もあります。

例えば、新規プロジェクトへの参加や別部門の業務への挑戦、部下の育成責任を担うことなどです。

昇進ポストが空いていなくても、担当業務や責任範囲を広げられる可能性はあるでしょう。

また、現在の仕事で具体的な成果を残しておくことも、将来の転職に向けた準備になります。

今すぐ会社を辞める必要はありません。まずは現在の環境で何ができるのか、考えてみるのも良いと思います。

タイで働き続ける?日本へ帰国する?30代・40代からのキャリア選択

タイで転職する場合に考えたいこと

タイでの生活が気に入っているのであれば、現地で転職しながらキャリアを積み重ねるという選択肢があります。

ただし、30代後半から40代以降になると、企業が求める経験や専門性との一致が、より問われるようになるでしょう。

例えば管理職を募集している企業であれば、一定のマネジメント経験を期待するはずです。給与が高い求人ほど、求められる成果や責任も大きくなる傾向があります。

一方で、技術職や専門職など、経験の蓄積が強みになる職種もあります。年齢だけで転職の可能性を判断する必要はありません。

また、転職先を選ぶ際には、給与だけでなく、役職や裁量、今後の事業展開なども確認したいところ。

目先の給与が上がっても、数年後に再び同じ悩みを抱えるのであれば、根本的な解決にはならないかもしれません。

日本への帰国・転職を考える場合

長くタイで働いていると、日本の転職市場が遠い存在に感じられることがあります。

日本の給与水準や働き方、企業が求めるスキルも変化しているため、帰国を考え始めた段階で情報収集をしておくと安心です。

特に、タイでの経験を日本の企業にどう伝えるかは考えておきたいポイント。

単に海外で働いていたというだけでなく、異文化環境でのマネジメント経験や海外拠点の運営、現地顧客との取引実績など、具体的な成果を整理しておくと良いでしょう。

家族や生活環境もキャリア選択の一部

30代・40代になると、仕事だけで将来を決めるのは難しくなってきます。

配偶者の仕事や子どもの教育、親の介護など、考慮しなければならない事情が増えてくるためです。

例えば、子どもがインターナショナルスクールに通っている場合、帰国のタイミングによっては進学先の選択に影響することもあります。

一方、タイで長く暮らすのであれば、老後の生活資金や医療費なども考えておきたいところです。

キャリアアップだけを優先するのではなく、家族とどこで、どのような生活を送りたいのか。

仕事と生活の両方を考えたうえで、自分に合った選択をすることが大切だと思います。

まとめ|タイでのキャリアを自分で選べる状態にしておこう

タイで長く働いていると、現在の仕事や生活が当たり前になり、将来のキャリアを見直す機会が少なくなることがあります。

しかし、キャリアが停滞していると感じたからといって、すぐに転職する必要はありません。

今の会社で新しい経験を積むことも、タイ国内で転職することも、日本へ帰国することも、どれも一つの選択肢です。

私が大切だと思うのは、必要になったときに自分の意思で進む道を選べる状態にしておくこと。

そのためには、現在の市場価値を知り、自分の強みを整理し、少しずつ経験を積み重ねていくことが役立ちます。

タイでの生活を楽しみながら、将来の選択肢も増やしていく。そんなキャリアの築き方があっても良いのではないでしょうか。

併せて読みたい

▶【2026年版】タイ就職におすすめの転職エージェント5選|選び方・注意点も解説

【2026年版】タイ就職におすすめの転職エージェント5選|選び方・注意点も解説

タイへの転職を考える日本人向けに、バンコクを拠点とする転職エージェント5社を厳選しました。リーラコーエン・JAC・パソナ・RGF・パーソネルコンサルタントそれぞれの特…

▶【タイ語VS英語】タイでキャリアアップするならどちらが必要?

【タイ語VS英語】タイでキャリアアップするならどちらが必要?

タイでキャリアアップを目指すならタイ語と英語のどちらを勉強すべき?この記事では二つの言語のメリット・デメリットを比較したうえで、おすすめの業界や職種について解…

▶タイで活躍する日本人の共通点と早期帰国者の分岐点

バンコク在住者が見てきた現実|タイで長く活躍する日本人と早期帰国者の分岐点

タイで長く活躍する日本人と早期帰国者には、明確な差があります。駐在員・現地採用・起業者それぞれのリアルを整理しながら、成功者に共通する4つの習慣と、多くの人がハ…

タイワークラボ編集部

在タイ日系人材会社で働く日本人が、「タイで働く」「タイで暮らす」日本人のためのリアルな情報を、現地からお届けしています。
人材業界での実務経験や在住者の視点を活かし、キャリア・制度・くらしなど幅広いカテゴリをカバー。今タイで働いている人だけでなく、将来的にタイでの就職・移住などを考えている方にとってもヒントになるような記事を目指して、日々コンテンツを発信中です。

サイトについての詳細はこちら