タイの産休制度【2025年12月改正】日数・給与・パートナー休暇まで最新情報をまとめて解説

日本と比較して女性の社会進出が活発なタイでは、スタッフの妊娠や出産休暇取得の機会に直面する場面が多いです。
また、女性の駐在員や現地採用として働く日本人も増えてきている傾向があるため、タイで妊娠・出産を迎える際に、職場での手続きや給与のことが気になる方も多いでしょう。
タイではこれまでも出産に伴う休暇が設けられていましたが、2025年12月に施行されたタイの労働者保護法(第9版)で、その内容が大きく変わっています。
具体的には産休日数や有給期間、これまで存在しなかった配偶者休暇の新設などです。
この記事ではタイの出産休暇に関して、2025年の法改正も含めて最新ルールをまとめています。
この記事の目次
タイ産休制度は2025年12月にどう変わったのか
まずは改正の全体像から確認しましょう。
今回の改正(労働者保護法第9版)の主な変更点は次の4つです。
- 産前産後休暇の日数:98日 → 120日
- 有給期間(雇用主負担):45日 → 60日
- 配偶者(パートナー)休暇:新設(最大15日、全額有給)
- 子の障害・疾病時の追加休暇:新設(最大15日、賃金50%補償)
改正の背景にあるのは少子化問題です。
タイでは出生数が1971年の約120万人から2022年には約50万人にまで落ち込んでおり、合計特殊出生率は約1.1とされています。 政府はこの状況を深刻に受け止め、出産・育児に関わる環境整備を急ピッチで進めています。
法改正はその一環として位置づけられており、社会経済情勢の変化に適応するため、労働環境を整備することを目的としたものとされています。
タイ労働法における産休の日数と給与のしくみ
前項で挙げたポイントと共に、タイの産休について日数や給与の仕組みを以下にまとめます。
産前産後合わせて120日
妊娠中の女性従業員が取得できる産前産後休暇の日数は、1回の出産につき98日から120日に拡大されました。
カウント方法は暦日(土日・祝日を含む)ベースです。
いつから産休に入るかは医師の診断や体調に合わせて判断できますが、産前と産後の配分も会社と相談しながら決めることになります。
給与はどうなる?
産休中の給与は、雇用主と社会保険(SSO)の両方から受け取るしくみです。
雇用主は産休取得者に対して最大60日間の全額賃金を支払う義務があります。
残りの期間については社会保険から給付を受け取ることができますが、2025年の法改正では60日間の満額給付は明記されていません。
法改正前の内容では45日間の賃金分は社会保険からの補償を受けることができますが、法改正後に補償が60日間へ変更されているか否かは社会保険庁や人事担当者へ直接確認をする事をおすすめします。
尚、社会保険からの給付には上限額も設定されているので、詳細については事前に確認するのがベターです。
子に障害・合併症がある場合
出産した子どもが合併症や障害、先天性疾患にり患している場合は、産前産後休暇に連続してさらに15日を上限に休暇取得が可能です。
ただし、休暇の取得には医師の診断書の提出が必要。
この追加期間中、雇用主には通常賃金の50%を支払う義務が発生します。
配偶者休暇が民間にも初導入
今回の改正で特に注目されているのが、配偶者(パートナー)向けの有給休暇(パレンタルリーブ)の新設です。
新たに導入されたパレンタルリーブは、父母を問わず従業員が取得できる制度。
出産前後90日以内に15日までの休暇を全額有給で取得できる点が特徴です。
これまでタイでは、民間企業の男性従業員に対する法定の育児関連休暇はありませんでした。
配偶者の出産を支える目的の休暇が民間部門に明記された初のケースであり、これまで公務員中心だった父親向け休暇を民間にも広げることになります。
取得のタイミングは出産前・出産当日・出産後90日以内と幅広く設定されており、実際の状況に応じて柔軟に使いやすい設計になっています。
男性の育児参加を制度として後押しする動きは、タイの労働環境において大きな一歩といえるでしょう。
社会保険(SSO)からの給付金を受け取るには
産休中に社会保険から給付金を受け取るための手続きは原則として、自分でおこないます。
しかし、会社の人事が手続きを代行してくれる場合もあるので、産休に入る前に人事へ相談するのがベター。
手続きは必要書類を準備した上で、オンラインにておこなえます。
申請に必要な書類
一般的に必要とされる書類は次のとおりです。
- 給付申請書(สปส. 2-01):SSOサイトからダウンロードして記入・署名したもの
- 子どもの出生証明書(สูติบัตร)のコピー1部
- 普通預金通帳のコピー(本人名義)
※申請書類は変更されることがあるため、最新の内容はSSOのウェブサイトまたは最寄りの社会保険事務所で確認することをおすすめします。
申請のタイミング
出産後できるだけ早めに申請するのが基本です。
給付期間は産休と連動しているため、申請が遅れると受け取れる期間が短くなるケースもあります。
出産前から準備を始めておくと安心でしょう。
給付額の目安
社会保険からの給付額は「月額標準報酬×50%」が基本です。
ただし、社会保険制度上の標準報酬には上限が設けられています。
給与が高い方の場合は、実際の給与の50%とはならない点に注意が必要です。
労働者保護法が定める使用者の義務と禁止事項
産休制度と合わせて知っておきたいのが、妊娠・出産に関する職場でのルールです。
タイの労働者保護法は、妊娠中の女性に対していくつかの保護規定を設けています。
妊娠を理由とした解雇は禁止
妊娠していることを理由に解雇することは、タイの法律で明確に禁止されています。
これは日本と同様の考え方ですが、タイでも違反した場合は使用者に対して法的責任が問われます。
もし「妊娠を理由に退職を迫られた」「産休から戻ったら雇用条件が変わっていた」といった状況に直面した場合は、タイ労働裁判所への申し立てという選択肢があります。
妊娠中の夜勤・残業は禁止
労働者保護法では、妊娠中の女性従業員に対して夜勤(午後10時~朝6時)や残業、休日出勤を命じることを禁止しています。
体調管理を最優先にした設計です。
危険業務の禁止
夜勤や残業に加え、以下のような危険業務の禁止がタイ労働者保護法の第39条に記載されています。
- 重い物の運搬
- 有害化学物質への曝露
- 振動が強い作業
- 高温・低温環境での作業
- 地下・水中作業
妊娠中のスタッフが重労働やその他の身体へ負荷がかかる業務に従事している場合は、一時的にバックオフィス系の業務や座ってできる軽作業などに異動をさせるのが一般的です。
就業規則との兼ね合い
タイの法律はあくまで最低ラインを定めたものです。
会社の就業規則がそれを上回る内容(産休期間の延長や有給期間の延長など)であれば、就業規則が優先されます。
逆に法律を下回る内容は無効となるため、雇用主側も注意が必要です。
日本の制度と比べるとどうなのか
タイに移住・赴任して出産を検討している方にとって、日本との比較は気になるところでしょう。
大きな違いのひとつは「育児休業」の有無です。日本では産休後に育児休業を取得でき、給付金も最長2年程度受け取れる制度があります。タイにはこれに相当する育児休業制度がなく、産休120日を取り終えると原則として職場復帰が前提となります。
もうひとつが給付額の水準です。日本の育児休業給付金は、休業前賃金の最大80%(育休開始から180日目まで)を受け取れます。タイの社会保険給付は賃金の50%かつ上限ありのため、給付水準としては日本のほうが充実している状況です。
ただし、今回の改正でタイの制度は着実に整備が進んでいます。会社によっては就業規則で産休日数や給与補填をさらに上乗せしているケースもあるため、自分の会社の規定を一度しっかり確認してみることをおすすめします。
まとめ
2025年12月7日施行の労働者保護法(第9版)による産休関連の改正ポイントをまとめると、以下のとおりです。
- 産前産後休暇:98日 → 120日に延長
- 有給期間(雇用主負担):45日 → 60日に延長
- 残りは社会保険(SSO)への申請で給付金を受け取る
- 子に障害・合併症がある場合:最大15日の追加休暇(賃金50%補償)
- 配偶者休暇:最大15日の有給休暇が民間企業にも初導入
産休制度を正しく活用するためには、法律の内容と勤務先の就業規則、この両方を把握しておくことが出発点になります。
法律が定めるのはあくまで最低ラインです。自社の就業規則に産休に関する記載がある場合は、合わせてチェックしておきましょう。
なお、タイの労働法は定期的に改正されています。
実際の対応が必要な場合は、最新の法令と現地の専門家への確認をあわせて行うことを強くおすすめします。
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タイワークラボ編集部

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