【タイ労働法】試用期間なら簡単に解雇できる?誤解されやすいルールまとめ

タイでは従業員の採用にあたり、試用期間(プロベーション)を設ける企業が多いです。
試用期間とは、入社後の数か月間を「見極め期間」として設ける制度。期間中であれば簡単に解雇できると考えている企業が多くあります。
しかし、試用期間中であっても労働者保護法は適用され、解雇が常に自由というわけではありません。
特に日系企業では、日本の試用期間の感覚をそのまま当てはめてしまい、後からトラブルに発展するケースも見られます。
本記事では、タイ労働者保護法における試用期間の位置づけや解雇時の注意点について、誤解されやすいポイントを中心に解説します。
この記事の目次
タイの試用期間(プロベーション)の位置づけ
まずはタイの労働法上「試用期間」がどのように扱われているのかを整理しましょう。
日本の感覚を当てはめてしまうと解雇や補償をめぐるトラブルにつながる可能性があります。
試用期間の法的な定義
結論から言うと、タイの労働者保護法には「試用期間(プロベーション)」という明確な定義規定はありません。
試用期間はあくまで、雇用契約や就業規則で企業が独自に設定している期間です。
そのため、試用期間中であっても
- 労働者としての身分
- 労働者保護法の適用
は原則として本採用と同じと考えられています。
試用期間の上限
法律上では試用期間についての明確な定義がないため、「試用期間は何ヶ月まで」という明確な上限も定められていません。
ただし、実務上は90日〜119日程度に設定されるケースが一般的。
特に重要なのが、勤続120日を超えるかどうかです。
勤続120日以上になると、解雇時に支払うべき補償金(解雇補償金・退職補償金)が発生するため、補償金の発生しない120日未満を試用期間として設定している企業が圧倒的に多いです。
解雇補償金(退職金)に関する基本は以下の記事にまとめています。
本採用との違いとは
試用期間と本採用の違いは、法律上の身分ではなく、評価・判断の位置づけにあります。
- 業務適性の見極め
- 勤務態度や能力の確認
といった目的で設けられるのが試用期間ですが、
「試用期間=いつでも自由に解雇できる期間」ではない点は、明確に押さえておく必要があります。
給与・福利厚生に差をつけて良いか
給与額と福利厚生については、試用期間中と試用期間後で差をつけている企業が多いです。
これは法的には問題はありませんが、雇用契約書(および内定通知書)には試用期間後の昇給額や、試用期間後に付与される手当、その他の福利厚生について明記する必要があります。
また、試用期間中に求める能力に達していないと判断した場合でも、内定時に伝えた額までの昇給が無いまたは減給となる場合は本人の同意が必要です。(不利益変更にあたる可能性があるため。)
そして、注意しておきたいのは休暇の扱い。
傷病休暇(Sick Leave)や用事休暇(Business Leave)は入社時点で付与される休暇のため、試用期間中であることを理由に休暇の取得を制限する事はできません。
試用期間中の解雇は本当に簡単?
次に、試用期間中の解雇がどこまで認められているのかを見ていきましょう。
「試用期間だから大丈夫」という考えが、必ずしも正しくない理由を解説します。
解雇予告や補償金は必要?
試用期間中であっても、解雇予告は絶対に必要。そして、補償金が必要になるケースもあります。
原則として、
- 正当な理由のない即時解雇
- 事前の解雇予告なしの解雇
を行う場合には、「解雇予告手当」が必要です。
また、勤続日数が120日以上の場合には、解雇補償金(退職金)の支払い義務が発生します。
解雇予告はいつするべきか
試用期間中であっても、解雇予告は退職日の一給料日前に行う必要があります。つまり、退職日のおよそ1ヶ月前には解雇予告をしなければならないということです。
たとえば、試用期間を119日に設定している企業の場合。
新しく採用した従業員を試用期間後に本採用をしないと判断した場合には、入社90日目頃に解雇予告をする必要があります。
逆に119日目に本採用は無い旨を伝えた場合は、以下のいずれかになります。
- 解雇予告手当(給与1ヶ月分)を支払い、即日解雇
- 予告日から1ヶ月後に退職とし、退職日に解雇補償金(給与1ヶ月分)を支払う
少なくとも給与の1ヶ月分は支払う必要があるので、解雇予告のタイミングは間違えないように注意しておきましょう。
不当解雇と判断されるケース
試用期間中であっても、以下のような場合は不当解雇と判断されるリスクがあります。
- 解雇理由が曖昧・主観的(会社のカラーに合わないなど)
- 能力不足の具体的な説明や記録がない
- 差別的な理由(妊娠、病気、国籍など)
- 突然の解雇で改善の機会が与えられていない
「試用期間だから」という理由だけでは、解雇の正当性は認められません。
期間中は新人を放置せずにしっかりと指導やフォローアップ面談等を実施し、その記録を残しておきましょう。
そうすることで、残念ながら試用期間中に解雇となってしまったとしても、不当解雇と判断されるリスクを格段に減らすことができます。
外国人労働者の場合の注意点
外国人労働者であっても、労働者保護法の適用は原則同じです。
試用期間中だからといって、外国人だけ不利に扱うことは認められていません。
一方で、外国人の場合は
- 就労ビザ
- ワークパーミット
との関係もあり、解雇後の滞在資格に影響が出る点には注意が必要です。
企業側も、解雇手続きが入管手続きに波及することを理解しておく必要があります。
まとめ|試用期間でも守られる労働者の権利
タイでは、試用期間中であっても労働者保護法が適用され、「簡単に解雇できる期間」ではありません。
試用期間はあくまで適性を見極めるための期間であり、解雇には正当な理由や適切な手続きが求められます。
特に、
- 解雇予告や補償金の要否
- 不当解雇と判断されるリスク
- 外国人労働者への適用
といった点を正しく理解しておくことが、企業・労働者双方にとって重要です。
「試用期間だから大丈夫」という思い込みが、後の労務トラブルにつながらないよう、正確な知識を押さえておきましょう。
参考資料・参考サイト
- Thailand Labour Protection Act – Employment Law
- Probationary Employee under Thai Labour Law(Nishimura & Asahi)
- Thai Employment Law(Probation & Termination)
タイワークラボ編集部

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